母校のため、若者のためにできること
学生記者:飯渕さんは学生起業支援も行っていると聞いています。具体的にどのようなことを行っているのかお聞かせいただきますか。
飯渕さん:現在は、福知山ではNEXT産業創造プログラム参加生の支援、東京では母校である自由学園の学生の支援を行っています。福知山ではLifexiaでインターンシップ生を受け入れ、学生の新規事業を生み出す過程でのサポートを行っています。東京にある自由学園では、Mind Leafの実績型インターンシップという制度で学生を引き受けて、実際に企業の営業部・ブランディング部など部署分けをし、自分が進みたい進路が本当にあっているのか体験してもらい、各々が商品を開発して、会社で販売し続けるという活動をしています。有名大学でも商品案を考えることはありますが、プレゼンテーションをして評価を受けて終わるのが一般的です。しかしこの活動では学生自身で作った商品が会社でこれからも販売し続けることになるので、学生は「コンセプトを考え、失敗を経験し、成功していくらの売上を生むことが出来たか」ということが語れるようになり、強力なガクチカを獲得出来ます。母校がすごく有名でもなく、大きくもなくとも自分たちの感性を活かしてアピールをして自分が進みたい道に進めるようなひとつの推進力になるように、実践型インターンシップというものを立ち上げました。

【学生起業プロジェクト】自然素材で肌に寄り添うスキンケアを届けたい! – CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)
この活動を1年間取り組んだ結果、この実践型インターンシップを自分たちが主体となって行いたいという学生が3名出てきました。私から学んだことを今度は他の学生に伝える立場になってマネジメントをし、さらには会社を立ち上げたいと言ってきたのです。とても驚きましたが、若干二十歳の学生でありながら自分たちのガクチカをつくりたいという理由ではなく、他の学生がしっかりとインターンシップで実績を積んで自信をもって将来を歩んでほしいという利他性を語ったからこそ学生ベンチャー設立のサポートをすることに決めました。そこでクラウドファンディングを行い、目標金額を達成したので法人化をすることになりました。今後はその法人で世代ごとの肌の悩みの解決と、実績型インターンシップの2本の柱で事業を進めていくのでぜひそちらの活動にも注目していただきたいです。
学生記者:前半の話で出た学生の意見を抽出する戦略や方法論と実績型インターンシップの話がつながりました。飯渕さんのお話から学生の教育へ注力する強い思いを感じました。しかし、ビジネスで利益を上げるには大学生では足手まといになってしまう部分があると思います。飯渕さんの中で大学生をどう戦力としてとらえたのですか。
飯渕さん:そうですね。良いことを抽出できるセンスがある学生は戦力になりえると考えました。そのセンスを発揮させるためにどの分野に学生を配置するかは私自身の力量やセンスが必要なので、その部分を自分自身で磨くこと、モチベーションを見抜き学生を信じるということが必要なのだと考えています。また、頑張ってくれることがうれしくなったり、学生からは活力を与えられたり、うまくいったときの笑顔を見られたりすることが私自身の原動力、モチベーションになっています。
飯渕さんが目指す新たなリーダー像と、学生時代
学生記者:大学生と関わることが飯渕さんに好影響を与えているのですね。次の質問からは飯渕さんのパーソナルな部分について深掘り出来たらなと思います。飯渕さんはご自身のスキンケア事業に加え学生の支援など手広く活動されていますが、ご自身がもつ理想の社長像はありますか。

飯渕さん:私は社長をやっていくうえで周りの人、関わっていく人に対して‘‘センスメイキング‘‘が大切になると考えています。センスメイキングとは、これまでの自分の経験や人柄から出てくる引き出し、そしてその引き出しをどのように結び付けて不確実な未来に進んでいくのかのセンスを見てもらい、仲間に腹落ちしてもらえる状態を指します。私がこうしたい、と考えたときに「この人についていきたい」と信じられる、仲間に安心してついていきたいと感じてもらえる存在であることが社長には必要だと思います。
学生記者:現在は社長として活動されている飯渕さんですが、学生時代は今の立場にあると考えていましたか。また、どんな学生時代を過ごしたのでしょうか。
飯渕さん:学生時代はとにかく野球とクラシック音楽(ピアノとフルート)が好きな学生でした。自由学園は特殊な学校でたいていの人がスポーツと楽器が出来たんです。また生活力を磨くために全寮制の生活を送っていました。寮では高校3年生が中学1年生の面倒を見ます。そういった特殊な環境にいながらも自分が楽しいと思えること、夢中になれることを突き詰めていました。いまでも週に1回草野球をしますし、音楽は楽器を演奏したり教えたりしてリフレッシュにもなる大切な存在です。福知山が好きな理由としてストリートピアノが多いこともありますね。福知山市では足立音衛門のストリートピアノを周って弾かせてもらったりしています。
学生記者:今日伺った話の節々から福知山との相性の良さを感じますね。(笑)また、一連の話を通じて飯渕さんの中での活動目的が、マネタイズということよりも、地域や人に貢献したいという気持ちが大きいのではないかと思いました。
飯渕さん:人という存在を意識するからこそ地域をよくしたいという気持ちが生まれてきます。地域にある価値を顕在化させる、人を育てるということが今の私の使命だと考えており、その両方が自分の中でうまく力を出せれば自然とビジネスという形で回っていくのだと思います。
飯渕さんから学んだこと

今回のインタビューを通して、飯渕さんが利他性を追求した結果が事業として表れている、成功に導いているのだなと感じました。これからのビジネスでは、従来のお金儲けを目的とした資本主義ではなくいかに社会的価値を与えられるかが求められると言われています。私も、飯渕さんがおっしゃっていたように自分が何を得られるかではなく、自分が何を与えられるのか考えて生きていく人になりたいと思いました。また、飯渕さんが質問に答える姿勢や一言においても言葉を選んでいる様子から、謙虚で誠実な印象を受けました。このような方が周りに信頼されてリーダーになるのだなとしみじみと感じました。今後も飯渕さんの活動、また飯渕さんが起業支援された学生たちの活動に注目です。